暖かな日射しがふ降りそそぎ、波もおだやかな春が近ずいている事を
感じさせる日だった。ふと見るとヨロヨロと副船長が近付いて来る。
「ヤソップ。胃薬ないか?」
「どうしたんだ副船長……青い顔して★飲み過ぎか?」
いつもなら、どんなに飲んでも顔色ひとつ変えない我等が副船長なのに
本当に めずらしい事もあるものだ。と思っていたら違う返事が返ってきた。
「いや……食べなれないモノ食ったせいだ」
「そういや、お頭も朝から姿が見えねぇが……もしかしてお頭もなのか?
昨夜ヘンなものでも食ったのか?ヤバイな…すぐ調査して原因をつきとめねぇと」
「……その、お頭が原因だ」
「………は??」
ほとほと困ったもんだという様な顔をしながら副船長は昨夜の事を語り始めた。
「なぁなぁ!!今日が何の日か知ってるよな? 俺、今回はスゲェの
やるから!!!ちっと待ってろよっ♪」
そう言って瞳をキラキラさせながらシャンクスは俺の部屋に入ってきた。
…こーいう顔してる時は、たいがいロクでもねぇ事を企んでいるのが定番だ。
俺は煙草の煙を肺の奥まで深く吸い、同じ様に深く長く溜息の様に吐き出した
「…バレンタインだつて言いたいのか? あのなぁシャンクス
昨年も言ったがアレは特定地域のみの風習で、しかも女から男にやるって
モノじゃないのか??さらに言うなら俺は甘いモノは嫌い……」
「ジャーン!!!どうだっスゴイだろーーーっ!!!♪」
切々と説得しようとしてる俺の話なんぞ、これっぽっちも聞いちゃいねぇ。
そうだよ。あんたは、そーいうヤツだよ。
そして嬉しそうな満面の笑顔をしたシャンクスの大きく広げられた両手には
妙なモノが握られていた。……ハケ……とバケツ……??
「……なんだ、そりゃ★ペンキぬりでもするのか??」
やれやれといった感じで煙りをふかしている俺を見てシャンクスは
不満そうに下唇をつきだした。
「おいおいドコ見てんだよ!!!下だよ下っっ!!!」
「……あぁ??」
言われるがままに下に視線を移した俺は激しい頭痛に襲われたかの様に
思わず頭を押さえ込んでしまい、すぐさま見るんじゃなかったと後悔した。
「特製!!!超巨大チョコポッキーー!!!」
なんて事だ……イーストブルーに、その人ありとまで恐れられた
我が赤髪海賊団お頭ともあろう者が下半身すっぽんぽんの、あられもない姿
なうえに、自信の立派(?)な息子にチョコを塗りたくっていたのだ……!!!
俺は目眩とともに一気に熱まで出て、その場にたおれこみそうになった。
「……で、どうしたんだソレ」
途中からオチが読めてきていたのか冷めた目付きで話を聞いていた
ヤソップが、心底あきれたといった顔で聞いてきた。
「……もちろん、ありがたくいただいたさ。
頭っからガブリと丸かじりでペロリとたいらげてやったよ」
「そりゃ、お疲れさん★ほい胃薬!! まったく…お頭の、お相手も大変だねぇ」
ふっ…と、遠い目をしながら煙草に火をつけ、たそがれはじめた副船長と
遠くで、お頭の吠える声が聞こえた様な気がしたが
それを尻目に今日は２人とも使いモノにならねぇから大忙しになりそうだと
予感した俺はイソイソと、その場を離れ仕事に戻ったのだった。
「くそーっベンの野郎っ!!足腰たたねぇほど食いやがってっ!!!
次のホワイトデーには倍返しだからなーーーーっっ!!!!★」
END